高校生の空手部員が重体(脳震盪を放置)

asahi.com:高校生空手部員が一時重体 脳振盪後に走りこみ 2007年10月24日15時19分
熊本市の私立開新高校(生徒1054人)で7月、空手道部の練習中に脳振盪(しんとう)で倒れた1年の男子生徒が直後に走り込みをさせられ、翌日に急性硬膜下血腫で倒れ意識不明の重体になっていたことがわかった。意識は戻ったが、現在も実家のある佐賀県内の病院に入院し、重い後遺症で歩けない状態という。田中満生校長は「このような事故が起き申し訳ない。走り込みはしごきとは判断していない」と話している。
同校によると、生徒は7月10日、組手の練習中、あご付近に突きを受けてひざから崩れるように倒れた。いったん道場内に寝かされたが、数分後に部長の男性教諭(39)の指示で、グラウンドでタイヤを引いての30メートルダッシュなどを数回させられた。
翌11日の放課後、生徒が職員室を訪ねて頭痛と吐き気を訴え、「病院に行きたい」と話した。部長は認めず、道場へ行くよう促したところ、生徒は職員室を出る際に倒れた。部長は生徒を床に寝かせて様子を見たが救急車は呼ばず、別の職員が119番通報したのは約40分後だったという。
脳震盪とは、頭部への急激な衝撃を受けた直後の一時的な神経機能麻痺で、これによって引き起こされるさまざまな症状のことを総称してこう呼びます。

頭部へ衝撃をけると頭蓋骨内で脳が急激に揺れ、脳細胞に損傷を生じ、一時的な神経(運動・感覚)損傷を伴います。
多くは直接頭部(後頭部)を打撲しておきますが、顎や顔面を強く打った時や、転倒時の回転性の遠心力によっても起こります。

スノーボードの転倒による脳障害については下記の記事を参照して下さい。
スノーボーダー死亡事故


頭痛や眼の焦点が合わないといった症状にはじまり、健忘(逆向性健忘・外傷後健忘)・意識消失・嘔気・平衡障害などさまざまな症状を呈します。


スポーツ中に倒れた場合の基本的な流れです。

1)症状の評価
記憶障害がないか・握力の低下はないか・視力のチェック・平衡感覚のチェック
脳震盪以外の傷害も疑うこと(頚椎損傷・急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫・脳内出血・脳挫傷等)

2)程度のチェック
軽度:一時的な意識不鮮明/意識消失はない
脳震盪の諸症状は15分以内にすべて消失

中度:一時的な意識不鮮明/意識消失はない
脳震盪のいずれかの症状が15分以上持続

重度:(秒単位でも)意識消失の存在

3)程度にあわせた措置
重度の場合は救急車を呼ぶのが得策
軽・中度の場合でもしばらくは安静、病院できちんと診てもらうことです。

「セカンドインパクト症候群」といって、一度目の脳震盪が軽いものでも、比較的短期間のうちに2度目の脳震盪が起これば、致命的な重度の外傷になることがあると言われています。


高校時代にラグビーをやっていましたが、「魔法のやかん」などといって、水をかけてすぐにプレーに復帰するということは、当たり前の光景だったような記憶があります。

本当は危ないんです。

現在のIRB(国際ラグビー評議会)の規定はこうなっています。
http://www.rugby-japan.jp/laws/rule/law_10.html


今回の事故の問題点
脳震盪その他が疑われる状態で倒れたにもかかわらず、その後も運動を続けさせた
翌日、本人が頭痛と吐き気を訴え、「病院に行きたい」といったにもかかわらず、認めなかった
倒れたあと、119番通報したのは約40分後

この教諭、知識がないのか、昔ながらの根性論だけでやっているのか、いずれにしても、こういった人にはスポーツの現場からいなくなって欲しいです。


この生徒さんが無事に回復されることをお祈りします。


関連リンク:On's Homepage>学生トレーナーの豆知識>脳震盪とは???

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